WoLさん

千星華(チセカ)

ブレないと言うことは、「ブレるだけの感情がない」とも取れるかもしれない
WoLさんだって完璧人間じゃないと思うんだ



調和の神は消えた。
残るのは神が残した遺品と、いつ消えるか解らない自分自身。
それでもかすかに残る希望を胸に、戦士たちは前に進むことを決めた。その先に、真実があると思って。

とはいえ、自分たちの主とも言える存在の死は、戦士たちの心に重くのしかかっていた。
表立って戦ってはいなかったものの、常に自分らを見守っていてくれた女神。間違いなく、自分たちの仲間であった女神。その彼女の死が、重くないわけがない。
だからこそ、行かなくてはいけない。
彼女の死にいつまでも打ちひしがれているわけにも行かない。やらねばならない事はある。リーダー格である光の戦士は、そう言って皆を鼓舞して一人先に歩き始めていた。
――まるで、皆に背を向けるように。
仲間たちは「揺るがない意思がある」と思い、その後を追う。一部を除いて。
そしてその一部は。
「おい」
声をかける。いまだ弱さを見せない光の戦士に向けて。
「少し、休んでいかないか?」
一部――クラウドの言葉に、光の戦士は始めて仲間のほうを――後ろを向いた。
「何故だ?」
問う声は、あくまでも穏やかで普通。だからこそ、クラウドは休みを勧めた。
「皆疲れてる。この状態でカオスの軍勢と戦うのは、無理だ」
「だが」
「万全じゃない状態で戦って勝てるほど、相手は弱くない。あんたはよくそう言うじゃないか」
「僕もそう思う」
クラウドの言葉にセシルが同意した。
「皆には僕から説明するから、少し休もう」
沈黙は、たっぷり1分。
「……解った」
光の戦士は、ようやく頷いた。「私も急ぎすぎていたようだ」と言い訳を一つこぼし、深くため息をつく。
そんな彼の様子を見て、二人は内心ほっと一息ついた。
「しかしそんなに時間は取れない。5分ぐらいで」
「10分だ」
光の戦士の言葉を、クラウドは遮った。
「10分やる。その間に、心の整理をつけておけ」
「……」
今度の沈黙は、長かった。
光の戦士の表情は、見た目ほんの少し翳っているに過ぎない。だがそれは見た目だけだ、とセシルは思う。
彼は、それ以上の表現方法が出せないだけなのだ。
喜ぶにも悲しむにも怒るにも、彼は一定のラインを決して超えない。なぜなら、その先を知らないから。
何よりも忠誠を尽くしていた相手の死に対し、彼はどうすればいいのか解らないだけなのだ。
ただ目の前にある「彼女の遺志を受け継ぐ」と言う目標にすがりつき、前に進むぐらいしか出来ないだけ。
だから、今は余裕をあげるべきだ。
感情の整理が下手で不器用な彼に、少しでも自分の感情を出させるために。
長い沈黙の後、光の戦士が口を開いた。
「……5分の間、私のところには誰も来ないでほしい」
「え」
あまりにも唐突な言葉に、思わずセシルが近づこうとするが。
「まだ、だ」
止められた。たった一言と、極めて静かな口調で。
……クラウドはセシルの肩を叩き、仲間の元に行くよう諭した。

調和の神は消えた。
残るのは神が残した遺品と、いつ消えるか解らない自分自身。
戦いは、ここから佳境を迎える。だから。

感情の出し方を知らない戦士のかすかな嗚咽は、きっと遠い幻聴だ。




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