バッツさん

千星華(チセカ)

ディシディアで細身なお兄ちゃんだったと改めて知ったぜw
某掲示板のバッツスレや最近見た小説などで、何となく自分の脳内で固まってきたバッツ像で小話を一つ。

バッツは心のどこかで、4人(レナ・ファリス・クルル・リックスの幼馴染)のうち誰かを選ぶ事になるのが解ってると思うのよね。



飛ばした紙飛行機が、力を失って弱々しく落ちる。
バッツはそれを拾おうとして……やめた。拾った後、また飛ばすのも無粋な気がしたから。
そもそも、紙飛行機を飛ばそうと思った理由を思い出せない。何かあったのは、間違いないのだが。
くしゃりとそれを踏みつけると、隣にいる相棒がクエッと一声鳴いた。
「ああ、そろそろ晩飯だっけ」
そうつぶやき、歩みを速める。日が落ちれば、それだけ食料を探すのが大変になる。保存している携帯食料は非常食の代わりになるので、まだ手をつけたくはなかった。
柔らかな風をかき分けるように、バッツは走り始めた。

『彼女』は言った。自分は風だと。

そう言われた時、バッツはからりと笑っただけだった。つかみどころがない。一所に落ち着けない。それは言われなくても解っている自分だからだ。
その笑みが少し止まったのは、でも、と付け加えられた言葉を聞いた時。

――逃げるのも。

一本取られた、と思う。
はぐらかしたりするのは、自分なりの処世術。本当は何を言えば相手が望むものを与えられるのか解らないくらいの口下手だから。
自分の思考は幼すぎて、手持ちのカードがどれだけの効果を発揮するか知らない。
でも、とバッツは思う。そう考えつつ、悩みつつも『彼女』と接するのも、楽しみの一つなのだろう。
互いの腹を探りあいながら、お互いにいいカードを出そうとするのも、また付き合いの一つのはずだから。

――求められれば与えたい。望まれれば応じたい。それは本当だぜ?


一人と一羽の夕食が終われば、後は静かな時間だけ。
そんな時間の中、バッツはポケットに仕舞い込んでいた一通の手紙を取り出した。
『彼女』からの手紙。どんな手品を使ったか知らないが、旅の空にいる自分に届いた手紙だった。
手紙の内容は、そろそろ落ち着いたらどうだと出だしから始まる恋文。恋文としてそれはどうだろうと思うが、今のバッツには一つの覚悟を決めさせるには充分なものだった。
内容をもう一度読んで、思う。
生まれてきて20年以上生きてきた自分は、形式的にはもう「大人」だ。たとえ心がどうあろうとも、時間は自分を子供のままではいさせてくれない。
いつかは向き合わなければならない問題。
逃げる事が許されない問題。
だからこそ、『彼女』も出だしに説教じみた一言を書いたのだろう。『彼女』は聡明で、自分に触れたいと思っているから。

いい機会なのかもしれない。

その先に待つものも受け入れて『彼女』は落ち着けと言っている。なら、自分も受け入れる時だ。
いつかその重荷に潰されるかも知れないという不安があったとしても、それが今の自分を止める理由にはならないはずだから。

バッツは手紙をポケットに仕舞い直し、大きく寝転んだ。




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